Morimori eat vegetables

宇内一童のブログ

Suicaの「ピッ」がハモっても、友情は生まれない

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昨日の帰り、駅の改札でSuicaをタッチしたときに、いつもより大きく「ピッ」と鳴った。

 

隣の改札を通る男とタッチするタイミングが一緒だったため、「ピッ」が重なって増幅したのだ。見事なくらい、同じタイミングだった。

 

Suicaを使い始めて、もう10年は経つだろうか。綾瀬、五反田、大手町、葛西、荻窪、西日暮里……これまでさまざまな駅の改札で、数え切れぬほどピッしてきた。僕の20代30代は、ピッと共に歩んできたといっても過言ではない。

 

そんなピッが、これまでにないくらい、完璧なタイミングで重なったのだ。もし僕が家に何年も開けていない大切なワインを貯蔵していたら、帰ってすぐさま開封していたかもしれない。それくらい奇跡的な、メモリアルなハモリだった。

 

ピッがハモった瞬間、僕は、隣の改札でピッをハモらせた相手のほうを見た。首を微かに、10度ほど右に回転させて。感動を2人で分かち合いたかったからだ。

 

 

しかし男はそんな僕に一瞥もくれず、改札を出て颯爽と歩いていった。まるで何事もなかったかのように。まるで「俺はピッなどまるで興味はない」と言わんばかりに。

 

去っていく男の後ろ姿を目で追いながら、僕はふと考える。

 

彼は、いままでどんなピッと共に、人生を歩んできたのだろう。彼にとってピッとは、いったいなんなのだろう。そして、価値観とはいったい

 

感動を共有できず、少し寂しい気持ちになったが、でも逆に、もし彼がピッに過剰反応してきたら僕はどうしていただろうか。冷静になって考えてみる。

 

男「ちょっとアナタ! いまピッがハモりましたよね! すごくないですか? いや、コレすごい確率ですよね? ヤバくないですか? ちょっとアナタ聞いてますか?」

 

僕「あ、そうですね。すみません、僕ちょっと急いでるので」

 

男「何言ってるんですか! 飲みに行かないとダメですよ! こんな奇跡ってそうそうあることじゃないですよ! よし、飲み屋で語りましょう! 『串のこたに』でいいですか?」

 

僕「いやいやいや、本当に結構です。すみません」

 

男「クソ馬鹿野郎ッ…!! せっかく人が誘ってるのにお前は空気が読めねえのか? ジジイみてえなダセえべっ甲のメガネしやがって! 今度ハモらせたらぶん殴るからな! とっとと消えろクソメガネ…!!」

 

僕「……本当にすみませんでした」

 

 

よかった。

 

彼がピッに興味がなくて、本当によかった。

 

(おわり)

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