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宇内一童のブログ

銭湯と馬と初恋と

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先週、サウナ室で汗を舐めてみたらしょっぱかった。

 

 

しょっぱい汗は健康なのか不健康なのか気になったので調べてみると

 

しょっぱい汗

発汗習慣のない人の汗

あんまり良くない

 

とのことだった。改善マインドの強いボクは、発汗習慣をつけようということで週1で銭湯に行くと決めた。 

 

どこの銭湯でも同じなのかもしれないが、ボクが先週から通っている下町の銭湯ではおっさん達がサウナ室で競馬の話をしている。相撲の話もたまにするが、競馬率が高い。昨日のサウナは競馬率100%だった。

 

「最近の馬はみんな出来がいい」

「7番人気まではみんな1着になる力を持っている」

牝馬のワンツースリー、つまり三連複なら万馬券がなんちゃらで…」

 

せいぜい6人が限界の窮屈なサウナ室には名も知らぬ演歌歌手のBGMが常に流れているのだが、そのBGMをはるかに凌駕する声量でおっさんの馬雑学がこだまする。

 

全員が馬に夢中なわけではなく、馬の話をするのは50がらみの短髪のおっさんひとりだけだ。その横で上手に聞き役に徹している白髪のおっさんは齢60といったところ。もうひとりのおっさんは見た目40半ばの食いしん坊体型でほとんど言葉を発しないが暑さに耐えながら馬のおっさんの話に耳を傾けている。

 

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競馬をよく知らないボクは3人の会話に入ることができない。そんなボクの気も知らず、馬のおっさんは延々と馬の話をつづける。そうすると段々ハブられている気分になってくるのだが「興味のない馬の話に相づちを打つ作業」「ハブられ」を天秤にかけると「どっちでもいい」という結論が導き出されたため、ボクは馬の話を聞き流しながら静かに自分の馬を見つめていた。その時である。

 

「亀頭から汗が出ていない」

 

自分の馬の亀頭から、汗が出ていないことに気づいたのである。

 

体はこんなに発汗してるのに? 海綿体は汗をかかないのか? それともこれは何かの病気なのか? ボクだけか? おっさんたちの亀頭はどうなってるんだ? でもおっさんの亀頭をまじまじと見つめれば勘違いされる恐れがある……!

 

スマホがあれば、亀頭から発汗しないのが異常かどうかは1分もあれば調べられる。しかし、ここはインターネットと隔絶された灼熱の世界であり、おっさんの馬情報しか得ることのできない情弱の世界でもある。

 

そんな心許ない空間でボクに唯一できることと言えば、おっさんの馬話(うまばなし)を断ち切り、亀頭話(きとうばなし)を切り出すことだけなのだが、それはなんてなんだ。知らない人に話しかける、しかも亀頭の話を。社交性の乏しいボクにその選択肢は酷すぎた。

 

もしここに大きなサイコロがあったなら、とボクは思った。

サウナ室でサイコロを転がすボク。壁にぶつかって止まったサイコロの上面には「亀頭の話」と書いてある。すると馬のおっさんが小堺一機よろしくサイコロを拾い上げ、

 

「亀頭の話。略して〜?」

 

と促し、その他2人が元気よく「きとばな〜!」と応える。そんな『ごきげんよう』なシチュエーションなら「実はわたくし、亀頭から汗が出なくてですね」と心置きなく亀頭の話が切り出せるのに――

 

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ほどなくして、ボクはサウナ室を出た。結局、おっさんたちに亀頭の話を切り出すことはできなかった。あのとき、勇気を振り絞って話しかけていれば、世代を超えた友情が芽生えたかもしれないのに。心にしこりが残る結果に終わってしまった。

 

 

この事件は、ボクの初恋に似ている。

小6から中3までずっと好きな女の子がいた。まともに目を合わすこともできず、話しかけることもできなかったが、卒業式の日に告白すると決めていた。しかし、勇気がなくてできなかった。たとえ振られても、想いを伝えることだけでもできていればと後悔したものである。

 

この世は、小堺不在の『ごきげんよう』。サイコロを拾い上げてくれるハゲはどこにもいない。勇気を振り絞り、自力で想いを伝えることが大切なのだと、銭湯に学んだ夜であった。

 

(おわり)

 

※ちなみにYahoo!知恵袋で調べたところ「粘膜には汗腺がないので、粘膜で包まれている亀頭からは発汗しない」とのことでした。Yahoo!知恵袋なので真偽の程は定かじゃないです。

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