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Morimori eat vegetables

宇内一童のブログ

佐藤のはなし

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いろいろな佐藤がいる。



鈴木、山田、山本。そのどれもが日本人に多い苗字の代表格だ。
そして、佐藤も例にもれず人口が多い。世の中にはいろいろな佐藤がいる。


今日は佐藤について話す。


別に鈴木でも山田でもよかったのだが、ふと、自分の知り合いで同じ苗字の人はいるかと考えたとき、真っ先に浮かんだのが2人の佐藤の顔で、そのまま佐藤に意識を集中してみたところ、いままで出会った佐藤たちが記憶の底から溢れ出てきたのである。


「佐藤がこんなにも……」


僕の頭は佐藤まみれ。佐藤の大洪水。佐藤のオンパレードだった。こんな経験は今までになく、いい機会だったので、そんな佐藤たちについて記憶を整理した。

歴史の古い順に、僕の知ってる佐藤を皆さんに紹介する。






ガソスタの佐藤


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この佐藤は僕が高校の頃バイトしていたガソリンスタンドで知り合った佐藤だ。そこの社員として働いており、おそらく当時で30歳ぐらいだった。

ハゲてるのにロン毛で金髪なのがこの佐藤の特徴だ。それだけでもなかなかのインパクトなのだが、ずれ気味のメガネと不精髭がその個性に拍車をかけていた。


その頃の僕は悪ぶりたい全盛期で、原付のマフラーから出る音をデカく、そしてカッコよくしたかったのだが、気軽にマフラーを買えるほどの金はなかった。

で、バイトの休憩時間に佐藤に相談したのだ。


「金をかけずにどうにかならないスかね?」


すると佐藤はニヤッと笑って倉庫に入ってゆき、ドリルを片手に戻ってきた。

佐藤はおもむろにドリルを回し、近くに停めてあった僕の原付のマフラーに大きな穴をあけてからこう言った。



「エンジン回してみそ」



爆音だった。

そんじょそこらのヤンキーのそれより、遥かにうるさい原付がそこにあった。しかし、僕の思うカッコいい音からはほど遠く、ダサい音がそのままデカくなっただけだった。温水洋一が温水洋一の顔のまま九頭身になったようなもんだ。

元に戻してくれと頼んだが穴を埋めるすべは無く、卒業するまで九頭身の温水を乗り回すはめになったのだが、近所から苦情がきたり、警察に追いかけられたり、走行中に知らないおっさんが殴りかかってきたりと、穴をあけてからは余計な災難にたびたび見舞われた。



佐藤にドリルを持たすとろくなことがない。






22日の佐藤


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コールセンターでバイトしていた頃に出会った佐藤がいる。顔色は悪いのだが顔のパーツが整っており、身長が高くて足が長い。僕の知る佐藤の中では最も女に苦労しないタイプの佐藤だ。

バイト先で同じチームに属しており、佐藤やチームのみんなでしばしば飲みに行った。現在は出不精な僕だけど、その頃は自ら幹事となって積極的に飲みに誘っていた。


ある12月のことだった。


年の暮れが近づき、忘年会を企画した僕は、チームメンバーに都合の悪い日を教えて欲しいとメールした。都合の悪い日を避けて、出来る限り全員、忘年会に参加できるようにと考えたのである。返信メールを確認し、22日は大丈夫そうだったので、22日に決定した旨を全員に連絡した。

ところが佐藤は「22日は無理だ」と言うのである。

どうしてなのだと尋ねると、


「22日はイブイブイブだから無理」


と、さも当然の事のように佐藤は言うのだ。

クリスマスイブの前日のことを俗に「イブイブ」と呼んだりするが、更にその前日である22日のことを、佐藤は「イブイブイブ」と呼んでいるようだった。なんなのだ、そのバカ丸出しのネーミングは。

22日に女と過ごすことに関してなぜそれを先に言わないのか、都合の悪い日はないかとメールしたじゃないか、と疑問に思うわけだが、それはすぐ許した。文句を言うようなことでもないし、佐藤がいなくても忘年会はできる。


しかし、僕はどうしても「イブイブイブ」が許せなかった


「22日は彼女と過ごすから」なら何も問題は無かったが、イブイブイブは絶対にダメだ。なにがなんでもクリスマスに結びつけようとする根性が、最高に許せなかったのである。



それから毎年、12月22日になると、佐藤のことを急に思い出す。

一年に一度のイブイブイブに、記憶の中で再会する、季節はずれの織姫(僕)と彦星(佐藤)

「もう二度と逢いたくない」。織姫はそんな願いを短冊にしたためるのだが、彦星はお構いなしに逢いにやって来る。



佐藤を忘年会に誘うとろくなことがない。






モロ見えの佐藤


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電車の中。

前に座っている相手が、おばさんであろうが、おばあさんであろうが、そこにパンツの気配があれば、男はそれを注視してしまうという。


パンチラである。


その言葉のとおり、パンツがちらと見えている状態のことである。

男はこの、見えなさそうで見える、不用意に見えてしまっているというスレスレの感覚にスリルとロマンを抱く。男は皆、パンツ・チラリズムが大好きだ。そう思っていた。


佐藤という男がいた。


佐藤は会社の上司で、優しいマスクをした男。生まれつきだというほんのり茶色がかった髪の毛が優しい雰囲気を強調している。

僕たちの部署は電波の調査のような仕事をしており、男だらけの職場だったが、事務の女性が数人いた。

その頃の僕は20代半ばで、趣味で小説を書くことにハマっていた。執筆の時間をできる限り確保するため、基本的に週5日以上は働かない、残業はしない、寄り道しないで帰る、というスタイルを貫いていたのだが、繁忙期に休日出勤を頼まれたことがあった。


土曜日、休日出勤すると、いつもより人が少なく、事務の女性がきていなかった。


男だけの空間。


仕事をしながらも、合間合間に自然とエロ話がはさまれてゆく。
で、パンチラの話になった。

みんなパンチラが好きらしく、だらしない顔つきでそれぞれのパンチラ観を発表してゆく。
話はそれだけに留まらず、パンツの色や柄、形状の趣味嗜好などに発展。パンツのしゃべり場状態に。

場内はだんだんと熱気に包まれる。しかしその中でただひとり、氷の目つきで虚空を眺める男がいた。


佐藤である。


そんな佐藤に気づいた同僚が、パンチラについて佐藤に意見を求めた。

すると佐藤は、ようやく重い口を開いた。


「モロじゃなきゃ」


モロ。つまり、モロ見え。

佐藤は、パンチラに微塵も興味がないと吐き捨てた。


なるほど、と誰かが言い、佐藤はチラリズムの良さがわかってないんだな、と続けた。

しかし、佐藤は「違う、そうじゃない」と鈴木雅之になって牽制する。聞くと、佐藤はチラリズムに興味がないわけじゃないとのこと。


どうやら、パンツに興味がないらしい。


たとえそれが、チラと見えようが、モロに見えていようが、何の感慨もないのだという。

佐藤の言う「モロ」とは、パンツがモロなのではなく、具がモロであること。

つまり、モロチラ(具のチラリズム)なら良し、モロモロ(具のモロ見え)ならなお良し。さらに言うなら「パンツを穿いたらそこで試合終了ですよ」ということだ。



優しい顔をした佐藤は、時に厳しいことを言うものである。










上述した佐藤の他にも、いろいろな佐藤を思いだした。

ドキュメンタリーの佐藤、仲の良い佐藤、ペ・ヨンジュン似の佐藤、小5のとき好きだった佐藤。
数え上げればきりがないので、これぐらいにしておく。


みなさんの周りにも、佐藤がいるはずだ。

一度、佐藤について整理することをおすすめする。きっといろんな佐藤が溢れ出てくることだろう。

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